円安による建材の値上がりと賃貸物件の退去精算への影響
このところ、身の回りのたくさんのモノの値段が上がり続けています。住宅における建材もその影響が非常に大きく、リフォーム見積りの金額が目に見えて高くなっていると感じます。
2021年に始まった「ウッドショック」とは
2021年、新型コロナウイルスの影響により主にアメリカや中国で住宅需要が急増し、世界的に木材不足に陥ったいわゆる「ウッドショック」と呼ばれる現象が現在もなお長引いていており、日本国内では木材価格の高騰が続いています。それに加え、半導体不足による工業製品の製造遅延などで住宅設備の納期にも影響が出ています。更に、壁紙や床材に使用される塩化ビニール樹脂の原料であるナフサの高騰、物流コストの上昇などの理由によりビニールクロス、クッションフロア材の金額も高騰しています。
住宅業界への影響
これらにより、新築住宅やリフォームコストにも影響が出ています。住宅購入者でしたら買い控えをしてしばらく様子を見ていても良いかもしれませんが、賃貸オーナーは退去リフォームをせずに放置しておくわけにもいきません。そのような状況ですからオーナーは今までより高額なリフォーム代金を支払い、我々管理会社やリフォーム施工会社も可能な限り利益を削り、皆がギリギリのラインで単価を設定して、なんとか次の入居者の募集にこぎつけるわけです。
賃貸の退去者が影響を受けることも
賃貸住宅の退去者もこれらの影響を受ける場合があります。ビニールクロスやクッションフロア材は経年による償却が適用され、国土交通省ガイドラインに則って計算するのであれば、6年間で1円になる割合で設定しますので、例えば3年間で退去した人は、過失による汚損がある面のクロスに関しては、貼り替え費用の約半分(3/6年分)を負担しなければなりません。これはクッションフロア材にも同じことが言えます。
一方、木製のフローリングは償却年数がありませんので、張り替える部分の材料と施工費の費用を退去者が負担しなければなりません。
賃貸借契約書には、過失による汚損、破損修繕にかかるおよその金額の目安は記載されていますが、「退去時に原状回復すること」が原則となりますので、材料が高騰していようが今このタイミングで退去修繕しなければならないということになります。
退去清算を担当していると「修繕の必要が無ければ誰も損をしないわけですから、頼むから部屋をキレイに使ってくれ!」と言いたくもなります。お部屋をキレイに使用する人は、5~6年居住した後に退去しても、まったく壁・床の貼り替えの必要が無くルームクリーニングのみで済んでしまうということも珍しくありません。しかし逆に1~2年住んでいただけでどうしてこうなってしまうのか、というほど部屋中汚れている物件もあります。
価格高騰の一日も早い収束を願いながら、今月も粛々と退去清算に臨みたいと思います。
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