「兄さん、今回は母さんも無事に快復しているけど、先生は危なかったと言っていたわ。5年前に父さんが突然他界した時は、高額な相続税を用意できなくて、お母さんに全て相続してもらったけど、あれから、兄さんは相続対策をちゃんと用意してくれているの」

「洋子こそ、相続について何か準備や対策の考えはあるのかよ」

「兄さんと違って、私は、これから大学と高校に進学する子供達がいるのよ、相続税の準備なんかできてないわよ。幸次兄さんだって、相変わらずのその日暮らしだから絶対に準備などできてないわよ」

「わかった、母さんが退院したら、幸次も呼んで家族会議をしよう」

それから1週間後に母親も無事に快復して退院した。
母親は2年ほど前から、父親が生前中にリフォームした長男家族との二世帯住宅の自宅を出て、洋子の嫁ぎ先の佐藤家に世話になっていたので、今回も佐藤家に帰っていった。
母親が入院中に、1度も見舞いに来なかった次男の幸次も、母親の相続に関する家族会議をすると連絡したら、浜松まで来ることになった。

第1章 平凡な日々の終わり