家族会議当日

兄から母親の今後と相続に関して家族会議をしたいと言ってきたけど、面倒な話はしたくないのが本音だった。

更に、横浜から実家の浜松までの新幹線の往復運賃も安くはないし、浜松にいる兄や妹と違って自分だけ交通費がかかって不公平だと思った。
ただし、こんな不満を言うと、兄も妹からも「幸次は母親の面倒を看ていない」と言われてしまうので注意しなければと思いなおした。

母親と兄妹と会うのも、父親の三回忌以来だが、母親が入院中に見舞いにも行かなかったから、今回は仕方がないか。

母親はいつも優しく、兄妹には内緒で、こずかいをくれたが、離婚した頃から兄も妹も私に対する態度が厳しくなった感じを受けていた。

元嫁と結婚した時は、家族全員が大喜びしてくれたし、家族達から「よく、こんな幸次と結婚してくれてありがたい」などと元嫁も言われて喜んでいた。
常に兄と比べられて育てられたので、結婚した時には、自分もちゃんと結婚ぐらいできると心の中で自慢をしていたし、元嫁は不思議と母親には可愛がれていた。

兄からは、母親にタメ口で話すのは止めさせた方が良いと注意されたが、元嫁は誰に対してもタメ口で接していて、母親はそんな元嫁を気に入ってくれた。

俺自身の収入は安定しておらず、元嫁には苦労をかけていたが、上司と喧嘩して元嫁に黙って会社を辞めたのが、離婚への決定打となってしまった。
今でも、母親は俺の顔を見ると元嫁の話をしだすので、それはそれで辛かった。

第2章 次男 清水 幸次 編