
完全に手詰まりになってきた。
借金をしての代償分割金の話は想定外だった。
幸次と洋子と母親が賛成したら3対1になってしまうと危惧したが、理沙の口出しで感情的になった3人が、今回は纏まることは無いと思い少し安心した。
一旦、この話は持ち越しにして、何か他の良い案を考えることにしようと密かに思った。
「とりあえず、今回は問題意識の共有が出来たということで、不動産の現在の価値も確認しないと相続税の計算も出来ないから、不動産屋さんに不動産の価値の見積もりなども含めて色々と相談してみるよ。その結果を見て、もう一度、話し合いをしよう」
不動産屋という第三者を入れて話せば、今回の様な感情的な責め合いはしないだろうと思った。
「洋子が提案した、兄貴が不動産を全て相続して、銀行から現金を借りて、代償分割金を俺と洋子が貰う案も可能か確認してみてよ」
幸次が洋子の案を再び持ち出してきた。
「それも含めて、先ずは不動産屋さんに相談してみるよ」
今回の家族会議は、藪蛇な感じになってしまった。
とりあえずは、父親の代からお世話になっている不動産会社の社長さんに相談をすることにした。
第2章 長男 清水 伸一 編