
母さんが怒った口調で、理沙姉さんに口を出すなと言った。
「借金は我が家の問題です。これは黙っては聞いていられません」
義姉さんにしてみれば、そうだよな。
「義姉さん、8年前にリフォームで父さんの現金を使ってしまったのは、伸一兄さんと義姉さんでしょ。その家から母さんを追い出して、そのままこの土地と家屋を貰うのだから、借金ぐらいしてよ」
洋子も、感情的に怒鳴った。
「洋子、ちょっと落ち着いてくれよ。リフォームはお父さんが望んでしたことだから、理沙を責めるなよ」
伸一兄さんは、さすがに自分の妻が責められると辛いだろうと、ほんの少しだけ気の毒に感じた。
「兄さんは、リフォームで二世帯住宅にしたこの家を貰うのだから、ちゃんとお母さんの面倒を看なさいよ。それが清水家の長男の義務じゃないの」
洋子の怒りスイッチが入ってしまったみたいだ。
仲裁しないと、このままではヤバイと思って口を出してしまった。
「伸一兄さんも洋子も、母さんの前でやめろよ」
「幸次兄さん、良くそんなこと言えるわね。母さんの面倒も看ないで、勝手に横浜で独り暮らしを楽しんで、今回だって、母さんが入院していた時にも一度たりとも見舞いにも来なかったくせに」
第2章 次男 清水 幸次 編