
「お母さんの家賃帳簿の間違いが増えていると税理士さんに指摘されたようで、伸一さんから私に手伝えと言われて、お手伝いをしようと手を出したら、お母様が怒って洋子さんの家に行ってしまって、本当に申し訳ありません」
なんだ、その話か。
義姉さんは、母さんが家を出たのは、それが原因だと思っているのか。
それも一つの原因だろうけど、跡継ぎの男子も生まずに、母さんを無視して生活を仕切るからだよ、と思ったけど口には出さなかった。
「母さんは、ダメ嫁が好きみたいだから、義姉さんみたいな出来る嫁は鬱陶しいのかもね」
最大の嫌味を込めて返事をした。
久しぶりに、幸次兄さんのタメ口のバカ元嫁のことまで、思い出してしまった。
母さんは、不思議なことにタメ口のバカ元嫁を可愛がっていたし、今、思い出しても、あのタメ口のバカ元嫁には腹が立つ。
あのタメ口のバカ元嫁と比べれば、義姉さんは、まだましな嫁か。
「母さんはダメ嫁が好きなのよ。ダメ息子の幸次兄さんと結婚してくれただけで、タメ口のバカ元嫁に大感謝していたしね。幸次兄さんが結婚なんて、奇跡だと思ったけど、やっぱり離婚したし。でも、母さんは今でも、タメ口のバカ元嫁が戻ってくれないかと言うし。まあ、義姉さんも母さんに嫌われないように頑張ってね」
ちょっと嫌味を言い過ぎたかな。
でも、この際だから言いたいことは、何度でも言っておくか。
「義姉さんの娘の沙織ちゃんは、しっかり就職もしたけど、我が家はこれから大学進学と高校進学の子供達を抱えているから、現金はいくらあっても足りないし」
第2章 長女 佐藤 洋子 編