「伸一兄さんなら、相続した不動産を担保に銀行からお金借りられると思う。返済は家賃収入で行えばよいし。借りたお金で代償分割金をくれれば良いかな」

「え、ちょっと待ってよ」

「話がおかしくないか。母さんが説明しただろ。父さんは３棟のアパートを、それぞれに１棟ずつ分けて相続させたいと思っていたのだぞ。洋子は父さんの気持ちを無視するのかよ」

我ながら良い案だと思ったが、父さんの気持ちを持ち出して抵抗するのか。
父さんが他界した時に、相続税が足らなくなったのは、伸一兄さんのリフォームが原因なのだから、借金ぐらいして欲しいけど。

「俺もそれでいいよ」

おっと、幸次兄さんも理解して賛同してきたか。

「いくら不動産収入が入るといっても、さすがに、５５歳からの借金は絶対にむりだ。それに、いくら担保があると言っても、この歳で銀行がお金を貸してくれると思えない。いや絶対に無理だ」


「借金なんてとんでもない、絶対に無理です。」

理沙姉さんが口を挟んできた。

「嫁のあんたに口を挟む権利はないよ」

母さんが義姉にきっぱりと言ってくれた。
心の中でニンマリと笑んだ。