嫁の理沙に泣かれると、私達が悪い事をしたみたいになるじゃないか。

「とにかく少し落ち着こうよ。互いを責め合っても何も得る物は無いのだから」

伸一は冷静だね。

「母さん、幸次と洋子は現金で相続したいみたいだけど、アパートを売る選択肢はありえるのかな」

ここは、お父さんの為にも、ちゃんと言っておこうかね。

「私は嫌だね。父さんから、子供達一人一人にアパートを相続させるように引き継いだから、私が売るのは嫌だね。墓の中で父さんに、何故売ったと叱られそうだし。お前たちが相続してから売るのは、仕方がないと思うけど」


「とりあえず、今回は問題意識の共有が出来たということで、不動産の現在の価値も確認しないと相続税の計算も出来ないから、不動産屋さんに不動産の価値の見積もりなども含めて色々と相談してみるよ。その結果を見て、もう一度、話し合いをしよう」

さすがに、伸一も逃げたか。
子達だけでは話は纏められないから、不動産屋さんに入ってもらえば少しは纏まるのかね。

第2章 母 清水 多恵 編