「俺もそれでいいよ」

なんだ、幸次まで洋子の案に乗っかって来た。
まずい、洋子と幸次が、こんな案を推してくると、あと母さんが賛成したら困ったことになると焦った。

「いくら不動産収入が入るといっても、さすがに、55歳からの借金は絶対にむりだ。それに、いくら担保があると言っても、この歳で銀行がお金を貸してくれると思えない。いや絶対に無理だ」

「借金なんてとんでもない、絶対に無理です」

妻の理沙の叫び声だった。
理沙は、今日は、自分は黙って聞いていると言っていたのに、話が自分達家族の借金の話になって、思わず叫んでしまったようだ。
一瞬、全員が黙った。

「嫁のあんたに口を挟む権利はないよ」

母さんが冷たい視線と共に言い放った。
母さん、その言い方は無いだろうと思ったが、言葉に出すのを我慢した。

「借金は我が家の問題です。これは黙っては聞いていられません」

理沙も、負けずに言い返した。

「義姉さん、8年前にリフォームで父さんの現金を使ってしまったのは、伸一兄さんと義姉さんでしょ。その家から母さんを追い出して、そのままこの土地と家屋を貰うのだから、借金ぐらいしてよ」

第2章 長男 清水 伸一 編