
前々から、リフォーム費用で父親の現金を使ったことに根に持っている洋子が、感情的に怒鳴った。
「洋子、ちょっと落ち着いてくれよ。リフォームはお父さんが望んでしたことだから、理沙を責めるなよ」
おもわず、自分の妻をかばった。
「兄さんは、リフォームで二世帯住宅にしたこの家を貰うのだから、ちゃんとお母さんの面倒を看なさいよ。それが清水家の長男の義務じゃないの」
洋子も感情的になってしまい、なかなか引き下がらなかった。
まずい展開だと思っていたら、幸次が仲介をしようと口を出してきた。
「伸一兄さんも洋子も、母さんの前でやめろよ」
「幸次兄さん、良くそんなこと言えるわね。母さんの面倒も看ないで、勝手に横浜で独り暮らしを楽しんで、今回だって、母さんが入院していた時にも一度たりとも見舞いにも来なかったくせに」
洋子の怒りが、今度は幸次に向かった。
「なんだよ、洋子は佐藤家に嫁に出た身だろ。そんなに兄貴たちを責めるなよ。だいたい母さんも、ちゃんと二世帯住宅にした自分の家があるのだから、娘の嫁ぎ先の家に住むのをやめろよ。洋子の旦那の雄一君だって内心は困ってないのかよ」
幸次が、自分は母親の面倒を看ないくせに洋子と母親を責めだした。
第2章 長男 清水 伸一 編