
「いくら不動産収入が入るといっても、さすがに、55歳からの借金は絶対にむりだ。それに、いくら担保があると言っても、この歳で銀行がお金を貸してくれると思えない。いや絶対に無理だ」
「借金なんてとんでもない、絶対に無理です。」
あれ、嫁が口を出してきたよ。
まあ、気持ちは解るけど、ここはあんたが出る幕ではないけどね。
「嫁のあんたに口を挟む権利はないよ」
「借金は我が家の問題です。これは黙っては聞いていられません」
生意気に、言い返すね。
「義姉さん、8年前にリフォームで父さんの現金を使ってしまったのは、伸一兄さんと義姉さんでしょ。その家から母さんを追い出して、そのままこの土地と家屋を貰うのだから、借金ぐらいしてよ」
リフォーム費用を責めるのはちょっと違うけど、土地と家屋を貰うのはそうだね。
「洋子、ちょっと落ち着いてくれよ。リフォームはお父さんが望んでしたことだから、理沙を責めるなよ」
「兄さんは、リフォームで二世帯住宅にしたこの家を貰うのだから、ちゃんとお母さんの面倒を看なさいよ。それが清水家の長男の義務じゃないの」
あれ、洋子は私の気持ちを知っていて、そんなことをいうのかね。
やはり、佐藤家でも私は邪魔者なのかね。
第2章 母 清水 多恵 編